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地元商店街とのつながりが生んだ、学生たちの郷土愛。開催3年目になる「弘前ポスター展」を取材

▲学生たちが作ったポスター。どれも完成度が高いです

こんにちは!市民ライターの黒岩唯です。

皆さんは、「商店街ポスター展」をご存知でしょうか。
商店街の活性化を図るため、各店ごとにユニークなポスターを制作するというプロジェクトで、2012年に大阪の新世界市場で初めて開催されました。クスっと笑えるものや、店主の人柄をうまく表現したポスターはたくさんの話題を呼び、県外からポスターを見に訪れる人も少なくなかったといいます。

この企画が皮切りとなり、商店街ポスター展は全国各地で開催するようになりました。今回ご紹介する「弘前ポスター展」は、商店街を盛り上げるためのポスターを作るという企画を取り入れながら、学生が地元の魅力を再認識し、郷土愛が育まれるよう、学生向けワークショップの形にカスタマイズしたプロジェクトです。

▲弘前ポスター展は今回で3回目になります

▲土手町商店街を活気づけるためにプロジェクトは始動しました

◆郷土愛の育成と商店街を活気づけるため「弘前ポスター展」は始まった

学生に地元の魅力を再認識してほしい、土手町商店街を活性化させたいという思いから「弘前ポスター展」は始まりました。ポスターを作るのは弘前に住む学生たち。若い感性を生かしながら土手町商店街のPRポスターを作るこのプロジェクトは、2019年に初めて開催しました。
取り組みは今年で3年目。2021年11月27日~2022年1月10日にはWEB投票と併せて市内3カ所で総選挙が行われ、3月に投票結果を発表する予定です。

▲ヒロロ3階に掲示された、弘前ポスター展の作品

今回ポスターを制作したのは地元の高校生6人と大学院生1人の計7人。一人一枚担当し、全7枚のユニークなポスターを完成させました。11月20日には商店街の方々へのポスター贈呈式が行われ、学生自身がポスターをお披露目。学生の自由な発想でポスターを制作するため、店主に対しての企画プレゼンなどは一切なく、完成するまでどんな作品になっているのかは当日まで見ることができません。これも全国で展開される商店街ポスター展の特徴でもあります。

◆ワークショップで学ぶ、貴重な経験の数々

ポスター制作には、広告の第一線で活躍するクリエイターがバックアップ。全4回のワークショップの中でキャッチコピーの作り方や写真の撮り方、取材の仕方などを指導しました。そのノウハウを生かし、学生たちが取材から撮影、ポスター完成まで手掛けます。
ポスターのビジュアルデザインをサポートしたのは、青森県内で活動するクリエイターやデザイナー。青森県内から6人、県外から2人がワークショップに参加し、学生と一対一でポスターの制作をサポートしました。

▲デザイナーと一緒にポスターデザインを決めていきます

若い力で商店街を活性化しようとする「弘前ポスター展」ですが、この取り組みで土手町商店街になにを残していったでしょうか。今年の弘前ポスター展を担当している弘前市役所広聴広報課の原子さんにお話をお伺いしてきました。

▲弘前ポスター展を担当する原子さん

◆「学生ってすごい」。そう心から感じたプロジェクトだった

「弘前ポスター展」も今回で3回目になりますが、どんなことを感じていますか?

――3回目になる弘前ポスター展を無事に開催できたことにまずホッとしています。
ポスターを制作していく中で感じたことは、「学生ってすごいな」ということ。大人では思いつかないような表現や発想を学生たちが引き出していて、「こんな表現の仕方があるんだ」「こんな発想できるんだ」というような、我々が見つけられないような広い視点を持っていて、とても驚きました。

 弘前ポスター展が始まったきっかけを教えてください。

――郷土愛の育成と土手町商店街の活性化を目的として「弘前ポスター展」は始まりました。商店街に人が来ないというのは全国的な問題で、弘前市としても長年の課題となっています。ご年配の方はにぎやかだった頃の土手町商店街を知っていますが、地元の学生はその時代を知らないのです。もっと地元の魅力を知ってもらいたい。若い人が学校帰りに立ち寄ったり、休日に出かけたり、もっと商店街に親しみを持ってもらいたい。その思いから、商店街と学生を対象にした「弘前ポスター展」が始まりました。

弘前の魅力のひとつである土手町商店街を、若い人にもっと知ってほしいという願いから、募集対象を学生にしたんですね。

――そうです。地域活性化というのが一番の目的ではあるのですが、学校の授業で店舗に取材をしたり、キャッチコピーを考えたりする機会ってなかなかないですよね。そこで、学生がこうした経験ができるイベントや企画がないか探した結果、大阪でやっている商店街ポスター展が面白いみたいだよ、という話が出ました。学生に地元の商店街のことを知ってもらえるし、商店街も盛り上がる。また、学生にとっても貴重な経験の場になる。そこから弘前市も商店街ポスター展をやってみよう、ということになりました。

開催が決定した時の、商店街の反応はどうでしたか。

――初めて開催した年は、「ポスター展?なんだそれ」という反応をする人が少なくありませんでしたね。商店街の人たちはみんな「照れくさいよ」とか「恥ずかしい」と言っていたんです。しかし1年目、2年目と、「弘前ポスター展」を通して商店街と学生たちがふれあっていくうちに、店主さんも親しく接してくれるようになりました。3年目には「今年もあるんだね、うちでもやってよ」と声をかけてくれる人もいました。「弘前ポスター展」が土手町商店街に浸透してきたことを実感でき、とてもうれしかったですね。

▲店主の言葉に耳を傾ける学生の表情は、真剣そのもの

▲手元の用紙は、書き留めたメモでびっしり

ポスターを制作した過程で大変だったこともありましたか?

――今回、高校生6人大学生1人の計7人がポスター制作に参加してくれたんですが、全4回のワークショップの中で作品を完成させるのは、すごく大変な作業だったと思います。その短い中でも、ものすごいクオリティのものを作っていただき、我々も驚きを隠せませんでしたね。部活や勉強の合間を縫って参加してくれたので、学生たちには感謝しかありません。この経験は何ものにも代え難いと思いますし、ポスターを作る過程として学生と商店街の人たちがふれあえる機会ができたことをとてもうれしく思います。

▲ポスターの写真撮影。思い思いの構図でシャッターを切っていきます

11月に行われた贈呈式はいかがでしたか。

――制作したポスターは、贈呈式の日までお店の人や外部には一切見せないんです。贈呈式で初めてのお披露目になるんですが、「お店の雰囲気にあったような表現でいいね」とか「クスっと笑える表現で、いい味を出してる」と、店主さんのリアルな反応を見ることができたいい式でした。みなさんうれしそうな顔をしていて、開催して本当に良かったと思っています。

▲贈呈式の様子。そこにはたくさんの笑顔で溢れていました

最後に、弘前ポスター展への思いをお聞かせください。

――土手町商店街や地元の人からは、「商店街と学生がふれあっているところを見られてホッとした」という声をよく聞くようになりました。商店街の人と学生って、普段なかなかふれあう機会がないんですが、今回「弘前ポスター展」でひとつのつながりが持てて、「地域に一体感が生まれた」と話す人もいました。商店街と地域につながりが生まれるのは、我々にとってもうれしい限りです。
これをきっかけに、商店街に一人でも多くの人が訪れてくれるといいなと思います。

◆取材を終えて

「弘前ポスター展」を通して生まれた、商店街と学生のつながり。

ポスターを制作した学生の中には、「初めて入ったお店だけどこんな優しい人だったんだ」とか「今までのイメージがガラッと変わった」と言っていた人もいたそうです。
このプロジェクトをきっかけに商店街にたくさんの人が訪れてほしいと思いますし、ポスター制作の経験が、のちの人材育成につながっていけばいいなと感じました。

弘前ポスター展の総選挙は1月10日に締め切られ、3月に表彰式を予定しています。
表彰式の様子も今後お伝えしていきたいと思うので、ぜひ楽しみにしていてください!