弘前・相馬地区ミステリー第9弾~「沢田ろうそくまつり」ってどんなまつり?~
弘前の冬のイベントと言えば「弘前城雪燈籠まつり」が代表格ですが、弘前公園から約15キロ離れた山間部で行われる「沢田ろうそくまつり」もオススメなので紹介します。▲沢田ろうそくまつりは素朴で幻想的なまつりです
◆沢田ろうそくまつりとは
沢田ろうそくまつりは、弘前市の南西部にある沢田神明宮の大祭の前夜祭として、旧小正月の晩に行なわれている行事です。古くからの行事として継承させてきたものの、いかんせん記録が残っていないため、起源や始まった年代については明らかになっていません。一説によると、壇ノ浦で滅んだ平家の子孫が祖先の霊を供養するために、約450年前から始められたと言われています。
時代とともに変化を遂げながらも、五穀豊穣や家内安全などを祈るとともに、ろうそくの蝋(ろう)の溶けた形や岩屋堂内の氷柱の大きさから、その年の吉兆を占う行事として続けられてきました。
▲沢田神明宮(赤丸部)は弘前の山間部に位置している(黄丸部が弘前公園)
まつりは基本的に沢田神明宮のある沢田町会の住民が行ってきましたが、相馬村が弘前市に合併した2006年に、沢田町会の住民を含めた「沢田ろうそくまつり実行委員会」が発足し、まつりを担うようになりました。
運営が実行委員会に引き継がれてからは、岩屋堂のなかの岩肌にろうそくを立て五穀豊穣や家内安全を祈願するまつりの本質を守りながらも、篝火(かがりび)を焚いたり、書道家の先生にまつりのテーマを揮毫(きごう)してもらったり、山菜や蕎麦、工芸品のミニ炭俵の販売を行なうなど、副次的な要素も加わりました。
◆まつりの様子
沢田神明宮に入り、まず目に飛び込んでくるのが篝火です。井桁(いげた)に組まれた薪が大きく燃えている様子は迫力があります。
アスファルトが熔(と)けるほどの温度になるため、篝火を焚くエリアは耐熱レンガが敷かれています。▲燃え盛る篝火(2016年)
境内にある沢田公民館の壁には、書道家の先生に揮毫してもらったまつりのテーマが飾られます。
沢田神明宮の祭神である天照皇大神の文字が記された旗も印象的です。
鳥居をくぐり、参道を登っていきます。タイミングが合えばたいまつ行列と一緒に登ることができます。▲岩屋堂へ向かうたいまつ行列
参道を登り、岩塊の壁の中腹に掛けられた岩屋堂のなかに入ります。持参もしくは境内で購入したろうそくに火を灯し、ご神体である自然そのままの岩肌に立てます。
ろうそくを灯し、岩肌に立て、火を奉納する。そして手を合わせる。いたってシンプルな行為ですが、どこか神秘的で幻想的な気持ちになります。
▲岩屋堂内の岩肌にろうそくを灯している様子
まつりの終盤には、登山囃子(とざんばやし)の奉納があります。相馬地区登山囃子愛好会を中心に、各地の登山囃子団体の方々が集まり、雪の夜をさらに盛り上げてくれています。
お山参詣で聴く登山囃子も大好きなのですが、雪景色のなかで聴く登山囃子は格別です!▲登山囃子団体の方々は自主的に集まっています
沢田ろうそくまつりの翌日は大祭が行われます。
その時に、前日に灯したろうそくの蝋の溶け具合と岩屋堂内にできた氷柱の大きさをみて、今年の豊凶を占います。▲沢田神明宮の氏子総代が占っています
派手さはありませんが、慎み深さや厳かさを感じられるまつりでオススメです。
◆まつりの準備も魅力の一つ!
実は、まつりに向けての前日・当日準備もオススメポイントの一つです。準備の様子を少しばかり紹介します。▲市街地では見られない景観!美しい…!
沢田神明宮の境内の除雪からスタートします。例年、沢田には1メートルくらいの積雪があります。腰くらいまで積もっている雪を機械とスコップを使ってどかしていきます。
鳥居までたどり着くと、今度は参道の除雪が始まります。参拝客が岩屋堂まで登れるように、丁寧に除雪し、踏み固めていきます。▲参道の除雪をしている様子
夕刻になったら、境内と参道を灯すキャンドルに火をつけます。
風や雪が吹いて火が消えないようにするのと、火が揺らめくようにするために、水の入ったカップにキャンドルを入れて設置します。
フローティングキャンドルという水に浮くタイプのキャンドルを使用しているので、カップの中で水に浮き、浮きながら揺らめくわけです。▲学生ボランティアも大活躍
そんなこんなで準備をしていると、まつりが始まる時間になっています。
自分たちで創り上げた!という充実感に満たされながら参拝できるのが、準備した者の特権なのだと思います。
誰でも準備に参加することができますので、興味のある方はひろさきボランティアセンターで申し込みください。
◆まとめ
冬に沢田に行くのは一苦労ですが、弘前のディープな冬のまつりを体感してほしいです。オススメなのでぜひ行ってみてください!
【参考文献】
鳴海恒男『相馬村史』津軽書房 1985年
広報相馬昭和62年4月号東北地域文化研究所所長 笹森正「ろうそくまつり再考」
【地図】
出典:国土地理院撮影の空中写真
【協力】
沢田ろうそくまつり実行委員会・事務局長 三上雄一さん
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