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冬支度も美しく。樹木を守る、弘前公園の雪囲い

▲市役所職員による雪囲いの作業風景

こんにちは!市民ライターの黒岩です。
弘前に移住して、3回目の冬を迎えました!

一晩で50センチ以上降る日も珍しくない雪国弘前。本格的な冬を前に、市内では「雪囲い」という作業が始まります。

今回は、多くの樹木が大切に守られている弘前公園での雪囲いをご紹介します。

 

◆園内の樹木を雪囲いの技術が守る

雪の重みによって樹木の枝が折れないよう、板や縄で囲いを作る伝統技法「雪囲い」。木の板を屋根のようにして固定するやり方や、縄で枝を固定する雪吊りなどの方法があります。

▲雪囲いは一般家庭でも行われる

雪は木の幹を曲げるほどの重みがあるので、雪対策をしていない樹木は重さに耐えられず折れてしまうことがあります。雪解けの春まで樹木を守る雪囲いは、弘前公園だけでなく、街中の植木や一般家庭では当たり前に行われている冬支度のひとつ。弘前にとって雪囲いは、冬の風物詩でもあるのです。

 

◆弘前公園の雪囲いに感動した日

積雪の多い地方ではなじみある雪囲い。私の地元長野県でもちらほら見られる光景なのですが、「弘前の雪囲いはひと味違う!」と感じた出来事がありました。

私が初めて弘前公園の雪囲いを見たのは、2022年の冬のこと。雪がちらつく日にたまたま立ち寄ったところ、園内の樹木を守る三角の屋根がズラリ!

▲昨年弘前公園で見た雪囲いの風景

「…すごくきれい!!」
自然に言葉が漏れたことを今でも覚えています。

弘前公園の雪囲いは機能性に優れた設置方法に加え、景観を崩さない美しさがあったのです。

 

◆対象樹木は約3万本!? 雪囲いの作業現場を取材!

11月下旬、風も冷たくなった弘前公園を訪れると、弘前市公園緑地課の職員が作業にあたっていました。

▲雪囲いの作業を行うのは弘前市公園緑地課の職員

国内有数のサクラの名所、弘前公園。園内ではサクラのほか、ツツジやシャクナゲ、マツなど多数の樹木が植えられています。冬を無事に越すため、雪囲いを施す木は約3万本にのぼるのだとか!

取材の日は、下乗橋付近から作業を開始。丸太やヒバの板を使いながら、まるで簡易的な家を建てるように樹木を囲っていきます。

▲一枚一枚、板を結んでゆく

見栄えにも気を遣うと話すのは市公園緑地課の職員。板の並べ方や縄のくくり方が美しく、非常に芸術的です。約3万本を施すだけでも体力勝負なのに、細部まで手を抜かない姿がとても印象的でした。

 

◆雪囲いの作業の安全を見守る桜守(さくらもり)・橋場真紀子さんにインタビュー

今回、弘前市公園緑地課の職員として弘前公園の樹木を守る桜守・橋場真紀子さんにお話をお伺いしました。

樹木医(※)の資格を持つ橋場さんは、弘前公園のサクラを守る「チーム桜守」としても活動しています。園内約2600本のサクラをはじめ、数万本の樹木を管理し、弘前公園の歴史を守っています。
(※ 文化財樹木や公園樹、街路樹などの保全や治療を行う、樹木の専門家のこと)

▲現場の安全指導をする橋場真紀子さん

 

◆歴史の残る場所だからこそ、雪囲いも伝統的なやり方で

黒岩:たくさんの板が用意されていますが、準備はいつごろから始めるのですか?

橋場:天気にもよりますが、だいたい11月20日頃から始めています。弘前公園の雪囲いは冬を越す上でとても重要な役割を持っているので、毎年新しいヒバの板を補充しながら冬支度を行っています。

黒岩:弘前公園の雪囲いを初めて見た時、あまりの美しさに感動したのを今でも覚えています。

橋場:公園の中は歴史を伝える天守や櫓・門などが残ってるので、雪囲いも伝統的なやり方によって、北国の文化をきちんと伝えていくことが大切だと思っています。

黒岩:やり方は昔から変わらないんですね。

橋場:そうなんです。骨組みを丸太で作るのが基本的な組み方なので、基本的なことは昔から変わらず、あとは応用しながら樹木に合った雪囲いをしています。

▲縄で編むようにして板を固定していく

▲板と板の隙間も、ミリ単位の正確さで揃える

黒岩:弘前公園の樹木を守る弘前市公園緑地課の仕事ですけれども、この仕事に就きたくて職員を目指す人もいるんじゃないですか?橋場さんはどうしてですか?

橋場:もともと樹木医になりたくて、当時公園緑地課の樹木医に相談し弘前城植物園で7年間働きながら勉強したんです。これまで配属されていた樹木医の退職を機に、弘前市公園緑地課に入りました。

▲公園緑地課の先輩樹木医との約束でこの職に就いたと語る橋場さん

 

◆冬しか見られない風景をぜひ見てほしい

橋場:樹木医になるまでの実務経験を弘前公園で積んだことはよかったなってすごく思いますね。経験したことが今生かされています。樹木医は勉強すればなれるので。大切なのはその先なんです。

黒岩:なぜ樹木医になろうと思ったんですか?

橋場:なれると思ったから(笑)

黒岩:即答ですね!

橋場:一生できる仕事をしたいなって思っていて。自分が子どものころから好きだったことだったら続けられるかなって。樹木医を目指しました。今は樹木医の資格を生かし弘前公園の樹木等の管理に携わっています。こういう仕事もあるんだよって、伝えられたらいいな。

▲冬景色の中でも映える雪囲い

黒岩:弘前公園に訪れる人に向けたメッセージをお願いします。

橋場:津軽の冬って、どうしても家の中で過ごす時間が多くなると思うんですけど、冬の弘前公園を楽しんでいただきたいと思っています。雪囲いはもちろん、雪吊りのてっぺんにつけられている頭飾りを楽しみながら、ご自宅の雪囲いの参考にされてはどうでしょうか。ぜひ弘前公園へ足を運んでくださいね。

黒岩:ありがとうございました!

 

◆取材を終えて

弘前公園の樹木を守る雪囲い。作業風景を見ていても、誰一人として手を抜くことなく、丁寧に作業しているのが印象的でした。去年の冬、私が「すごくきれい!」と感動したように、弘前公園を訪れる人の中にも、雪囲いの美しさに驚く人がいるはずです。

弘前の中でも特に歴史深い場所である弘前公園。冬の公園を楽しみながら、ぜひ雪囲いの伝統に触れてみてくださいね。


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