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津軽の女性のものがたりを 一心に聞いて文章で伝える

「私的に素敵」な津軽の女性たち

2022年10月から、陸奥新報の毎月第3水曜日の紙面に、「私的に素敵 そのあとに」というコラムが始まった。このコラムを担当しているのが、ライターの清水典子さん。23歳の時、縁あって神奈川県から弘前市に移住。子育てをしながら、りんご園でのアルバイト、フリーペーパーの記者などを経験。その後、37歳から陸奥新報文化部の記者となる。記者時代にライフワークとして始めたのが「私的に素敵」。津軽の女性たちに会って、話を聞き、当時の陸奥新報に連載した。2007年に弘前を離れたが、やり残したことがあることに気がつき、2023年4月、再び弘前で暮らし始めた。清水さんに、弘前に戻るきっかけと弘前の魅力を聞いてみた。

▲取材に答える清水さん

 

今回、弘前で暮らそうと思った理由はなんですか?

コロナ禍の東京で1人暮らし。誰とも話すことがなく、誰とも会わないつらい日々。死というものを身近に感じることもありました。だからこそ「今、ここ」を大事にしようと思い、残りの人生を、心残りのないように生きたいと思いました。私はなにがしたいのか。そう考えた時、私にはやりたいことがありました。陸奥新報記者時代、14年間にわたり取材した「私的に素敵」の続きがやりたいと思ったのです。

「私的に素敵」には、それぞれに違って素敵という意味合いと、私から見て素敵、というふたつの意味があります。300人あまりの女性たちを取材し、自費出版で2冊の本にまとめました。最初の取材から、25年、30年近くがたち、あの時輝いていた女性たちは、今どうしているのだろう。もう一度会って、彼女たちの言葉に耳を傾け、文字に残したい、と思いました。彼女たちも私も歳をとったけれど、今だからこそ書けることがあるはず。陸奥新報社に企画を出し、2022年10月から、「私的に素敵 そのあとに」のシリーズがスタートしました。当初は、毎月のように数日ホテルに宿泊して取材。1回の取材に3時間、4時間かけお話を聞くのですが、あまりにもハードでせわしない。そこで2023年1月から、弘前に住まいを探し、15年ぶりに4月から弘前暮らしを始めました。

▲自費出版した「私的に素敵」

 

◆陸奥新報の記者時代の思い出は?

300人以上の女性たちを、取材させていただきました。取材を通して感じたのは、誰の人生にもドラマがあるということ。農家のおかあさん、バーのママ、バスの運転手、建築家などなど。さまざまな職種や分野に生きる女性たちの言葉には力があり、真理がありました。津軽の女性たちの生き方から学ぶこと、教わることが多かった。だからこそ再び、年齢を重ねた女性たちの「今」に触れ、言葉を聞きたかったのだと思います。

話を聞くときは、録音はしません。一期一会だと思っているので、一心に聞きます。ライターの仕事は書くことだと思われがちですが、まずは一心に話を聞くこと。集中して聞いてはノートに書き取る、聞いては書き取ることを繰り返します。1人につき、ノート1冊を超えますね。その人に興味を持ち、その人にしかない物語を聞き取って、書き残したいと思っていました。

 

◆津軽の女性たちと弘前の魅力は?

津軽の女性たちの魅力は、その明るさとバイタリティにあります。突き抜けた明るさ、良い意味で「バカ」がつくほど一生懸命なのだと思います。私自身も、東京にいる時より、弘前にいる時のほうが明るい。土地の持つエネルギーのなせるわざかもしれないし、出会う女性たちの明るさ、バイタリティが影響しているのかもしれませんね。

私の部屋から、大きな岩木山が見えます。弘前で住むところをいろいろ探して、最後に出会った部屋。「ここにおいで」と岩木山に呼ばれたように感じ、即決でした。毎朝、目覚めて岩木山を眺め、一日の終わりにも岩木山と落日を見る。満ち足りた毎日です。弘前城植物園を、自分の庭のように歩く贅沢な気分。弘前に戻って、ねぷたまつりを楽しみ尽くしました。四季折々の移ろいは鮮やかだけれど、穏やかな時間がゆっくりと流れる「ケ」の日々。その一方で、祭りのときに燃え上がるような「ハレ」の日。その差が、弘前の大きな魅力ですね。

 

◆取材を終えて

清水さんのきゃしゃな体のどこから、このエネルギーが出てくるのだろう。

話を聞いている間、そう感じていた。陸奥新報記者になるまでの話、取材時の取り組み方、行動力。

取材が進むにつれ、ぽろぽろこぼれる津軽弁と、弾むような笑顔。

「私的に素敵 そのあとに」の文章は、私からのラブレターのよう。そう言う清水さんは、もうすっかり津軽の女性で、「私的に素敵」な人なのだなと思った。

 


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