鬼伝説を紙芝居で語り継ぐ〜弘前市鬼沢地区
弘前市鬼沢地区に伝わる鬼伝説をもとにした紙芝居を作ろうと、【歴史と伝説の里「鬼沢の会」】(藤田光男会長)のメンバーが作画や脚本などを分担し、2022年の春から約1年かけて作った紙芝居がこのほどお披露目されました。
藤田会長は「鬼沢に伝わる文化、歴史を広く伝えたい。鬼伝説を誰でも楽しめる紙芝居にしたらどうかと考えていた」と語ります。
今回は、津軽弁で語られる手作りの紙芝居を紹介します!
※【歴史と伝説の里「鬼沢の会」】の「鬼」の漢字にはツノがありません。
◆鬼沢に伝わる鬼伝説とは?
「鬼」は一般には畏怖の対象とされ、悪さをする存在として知られています。弘前市鬼沢には、岩木山にすむ鬼(大人:おに)が村の弥十郎と仲良くなり村の人たちのために水路を作ったという恵みをもたらす鬼の伝承があり、実在する鬼神社の由来ともなっています。
▲伝説を由来とする鬼神社。神社のへん額の「鬼」の漢字にはツノがありません
◆手作りの紙芝居
「鬼沢の会」は2012年頃に有志で結成。これまでも鬼にまつわるツアーの企画や義民・藤田民次郎を題材にした演劇を開催しています。会では、3年前から鬼伝説を広く親しんでもらう方法として紙芝居を作ろうという構想があり、2022年3月に制作を決定しました。脚本、作画、演出、紙芝居用の枠(舞台)作成、演者の役割分担をして月1回のペースで集まり、読み聞かせとしてどう書くのか、シーンに合う絵はどうやって表現するのか、幾度も調整をしていきました。遠くからも見えるよう、スライドも作成することになりました。
◆いよいよお披露目
2023年7月11日、自得小学校の66人の児童の前で初めての上演が行なわれました。鬼沢に伝わる心優しい鬼と村人との心温まる交流、そしてある出来事の結果、村を去った鬼の残した堰(せき)が伝説となったお話が横笛の演奏とともに津軽弁で語られます。上演時間は20分ほどでしたが、迫力ある語りに目を丸くして聞き入る児童もいました。終演後の感想発表では、「鬼伝説が分かりやすかった」「楽しかった」と児童たちが積極的に発言。その感動が伝わってくるようでした。
◆初披露を終えた感想をインタビュー
語りを務めた齊藤さん、横笛担当の鳴海さんから話を聞きました。
齊藤さん「初めてなので、聞き手の反応を探りながら抑揚や速さを調節しました」
鳴海さん「場面に合った効果的な演奏を語りに合わせることが難しいですね。皆さんに雰囲気が伝わったようでホッとしています」
齊藤さんは「今後も津軽弁の語りと横笛で、地元の伝統や文化を伝えて行きたい。大きな会場でなければ紙芝居だけでも十分に伝わると思う。上演の依頼があればぜひ伺いたい。気軽に鬼沢の会に声をかけてほしい」と、これからも意欲的に活動すると意気込んでいました。
2022年に赴任した自得小学校・宮野校長は、「鬼沢地区は地域と学校がまとまっていると感じます。これまでも地域を知る授業として、ねぷたつくりも実施しています。紙芝居は、児童も楽しみにしていました。学校が地域と手を取り合い、積極的に体験できる学びの場を広げることはとても良いこと」と話し、演出に使用した横笛について演者に質問していました。
▲鬼沢の会の皆さん(左から船越さん、藤田会長、齊藤さん、鳴海さん)と、自得小学校・宮野校長
◆取材後記
津軽の言葉と横笛の音で聞いた臨場感のある昔語りは心に沁みこむようで、とても印象深く、これからもたくさんの人たちに紙芝居を鑑賞してほしいと思います。
ふるさとに息づく伝説を、今日ここで聞いた子どもたちは覚えていてくれるだろうか。いつか忘れてしまうかもしれないが、きっと、ふとしたきっかけで思い出してくれると筆者は勝手に信じています。
本記事に関する著作権やその他の権利は弘前市に属します。
弘前市の許可なく、本文や写真を無断で転載することを禁止いたします。