輝く!第3回弘前ポスター展② 学生が学んだこと、総合ディレクターの狙いを独占インタビュー!
◆参加学生に、ポスター制作の感想をお聞きしました!
地元の学生が、商店街に並ぶ各店のポスターを制作する「弘前ポスター展」。
3月27日に行われた表彰式終了後に、グランプリを受賞した学生や参加した学生、総合ディレクターの日下慶太(くさかけいた)さんに感想を聞いてきました!
◆グランプリ受賞者 木村瞳花(きむらとうか)さん
「あえてマイナスな言葉を使うことで、店主の人柄を引き出した」
▲修理クドウサービス「直しすぎて、飽ぎでまった。」
——グランプリを受賞した感想を教えてください。
ポスターを作ること自体初めてだったんですけど、私を担当してくださったデザイナーさんや広告関係の方に直接教えてもらえたのは貴重な体験だったなと思います。
——ポスターのこだわりはありますか。
何年も続けているお店だと伺ったので、年季の入った様子が伝わるよう、店内全体が映るような構図にしてみました。
——キャッチコピーはどこで生まれたのでしょうか。
店主さん自身、「うちのお店はこういうところがいいんだ」と語っているよりは、マイナスなことを結構喋る方でした。でも、マイナスな言葉をあえて使うことで、店主さんの人柄とか雰囲気が伝わるのではないかと思い、「直しすぎて、飽ぎでまった。」という言葉をそのままキャッチコピーにしました。
——経験を今後どう生かしていきたいですか。
将来は、絵を描く仕事をしたいと思っています。
デザイナー職ではないんですが、絵を描くのが好きなので、この経験を生かして絵関連の仕事ができたらなって思っています。
◆準グランプリ受賞者 葛西香乃(かさいよしの)さん
「ポスター展を通して、弘前って面白いんだなって気付けた」
▲山崎洋服店「カモーン!! 規格外オーダー」
——弘前ポスター展に参加した感想を教えてください。
学校に告知ポスターが貼ってあって、面白そうだなと参加してみたんですが、思っていた以上に楽しかったです。自分の担当のお店しか行ってないんですけど、取材に行って、お話をいっぱい聞いたりしたときに、「弘前って面白いんだな」ってことに気付きました。実際撮影するときも、体勢変えたりして大変だったんですが、最終的にはいいものになったし、こうした賞を取れたことはとてもうれしいです。
◆準グランプリ受賞者 佐々木栞寧(ささきかんな)さん
「この経験を、他の分野でも生かしていけたら」
▲HEARTY’S MUSIC「好きな曲があれば弾けるはんで」/(写真中央)佐々木栞寧さん
——弘前ポスター展に参加した感想を教えてください。
最後までできるのかなってちょっと不安だったんですけど、こうした賞をいただけて、すごいうれしいなと思っています。将来はデザインとかそういう関係ではなくなっちゃうんですが、いろんな人と話す機会はこれまでなかったので、それは他の分野でも生かしていけたらなって思っています。
◆参加高校生 片山朱莉(かたやまあかり)さん
「企画を練っている時間がすごく楽しかったです」
▲Franco「わたしがあなたの“カワイイ”の秘訣!」
——参加したきっかけはなんですか?
先生の勧めで、「やってみない?」って言われたのがきっかけです。写真を撮るのが好きで写真部だったんですけど、一眼レフに触れられるって聞いて、参加してみました。でも実際、カメラを触っているよりも、企画を練っているほうが長かったんです(笑)。でも企画を練っている時間もすごく楽しくて、街の人との交流が持てたっていうのも、大きいなって思いました。
◆参加高校生 片野冴瑛華(かたのさえか)さん
「ポスター制作の経験を将来に生かしたい」
▲MACHINAKA RACK「私のお小遣いでも 大人コーデ」
——参加したきっかけはなんですか?
もともとクリエイティブの仕事に就きたくて、この企画に参加しました。来年美大を受験するんですが、今回のポスター制作の経験を生かして頑張ろうと思っています。
撮影とかデザインだけじゃなくて、自分のファッション選びとか、ポーズを決めたりとか、最初は全然考えてなかったことも考えつくようになったりして、想像以上に奥深いなって思いました。
◆弘前ポスター展 総合ディレクター 日下慶太氏インタビュー
「学生が作ったという美談にだけはしたくなかった」
商店街ポスター展の仕掛け人でもあるコピーライターの日下慶太さんにお話を伺いました。学生たちとポスター展を成功に導いた気持ちや、地方創生に関して日下さん自身が考えることなど、さまざまな思いをお聞きすることができました。
▲快くインタビューに応じてくださいました
日下慶太さんプロフィール
1976年生まれ、大阪府出身。株式会社電通でコピーライターとして勤務しながら、写真家としても活動する。ユニークなポスターで町おこしをする「商店街ポスター展」の仕掛け人であり、大阪府の新世界市場をはじめ、文の里商店街ポスター展、女川ポスター展など5回にわたって開催。2018年には自身の人生を綴った「迷子のコピーライター」を出版。
◆日下さんが語る、ポスター制作の裏側
——弘前ポスター展を開催するにあたって、考えていたことはありますか?
まず、「学生だから」とか「若い人が作ったから」というだけで終わらせたくなかったです。
学生が作ったっていうと、それだけで美談になりがちだけど、 “弘前や土手町商店街の活性化”も目的のひとつなので、僕としては、美談で終わらせずに、完成度の高いポスターを作るということを大切にしながら学生たちと向き合いました。
——ワークショップでは、日下さん自身が指導を行ったんですよね。
そうです。クリエイターやコピーライター志望の人に教えるようなことを、もっとかいつまんでやるような形でワークショップは進めました。ポスターの基本的な作り方とか、アイデアはシンプルにしなきゃだめよとか。
▲ワークショップではデザイナーと協力しながらポスターを制作
「ワンビジュアル・ワンコピー」っていう言葉があるんです。1つのビジュアルには、1つのキャッチコピーっていう考え方なんですけど、結構重要な考え方で。基本的なことだけど、めちゃくちゃ大事。そういうことを丁寧に教えました。
——何から始めたんですか?
最初はタグラインを作りましたね。最初から面白いものを作ろうとしないで、街の魅力はなんだろうって、みんなで考えました。左脳というか、理論的なところですよね。街や店の魅力を具体的に考えたら、次はメッセージを決めようって、それがタグラインです。
——最初からキャッチコピーの作り方じゃなくて、いろいろ情報を集めることから始めたんですね。
そうそう。結構ね、取材が大事なんですよ。取材して、どれが一番大事なメッセージかを考える。それをタグラインにして。だからまずはタグライン。次に写真の撮り方とかキャッチコピーを考えていきました。
——大変だったこととかありますか?
案がなかなか出なかったことかなあ。クリエイターでもパッとは出ないですからね。みんな粘って粘って、アイデアを出していました。
▲これまで制作されたポスターの数々
◆町おこしは、人に光を当てることから始まる
——地域を盛り上げることや、地方創生について考えていることはありますか?
弘前ポスター展をやっていた中でも思っていたんですけど、人にスポットライトをいっぱい当てていくことが大事なんじゃないかなって思います。普通のことなんですけどね、意外と忘れがちなんですよね。
たとえば、地方創生!って話になったときに、市全体とか、大きい地域の話になると、とたんに難しい感じになる。でも、人という個人にスポットライトを当てることが結局は重要なんじゃないかなって思います。
——個人にスポットライトを当てることが、地方の活性化につながる。
そう。たとえば町おこしをする!ってなると、どうしても大きな話に持っていきがちになるんだけど、一人一人にスポットライトを当てることで、徐々に地域の良さが伝わっていくんじゃないかなあって。町って、結局は個人が集まってできている場所だから、その人たちに光を当てていくことが結局は大事なんじゃないかな~って感じています。
▲笑顔が光った表彰式でした
◆取材を終えて
今回、弘前ポスター展の取材の中で学生たちの思いをたくさん聞かせていただいたのですが、賞を取れた人も、そうでない人も、皆さん笑顔で達成感に満ちている表情をしていたことがとても印象的でした。
商店街ポスター展は3年の節目を迎えたことで、一旦は終了することとなりました。今後は何かの機会に再び開催することを期待するとともに、ポスター制作で得た知識や経験を生かし、学生たちが弘前の発展へ貢献していくことを心から願っています。
以上、弘前ポスター展の表彰式レポートでした!