誰でも集える場所を弘前に。子育てママが立ち上げた「しののベース」を取材しました!
こんにちは!
市民ライターの黒岩唯です。
弘前に移住を考えている人や、気になっている人の中には「いつかは子育てがしたい」と考えている人もいると思います。
自然いっぱいの場所でのびのび育てられそう、おいしいものを食べさせてあげられそうと思う一方で、「つながりが持てなさそう」「孤独になったらどうしよう」と考える人もいらっしゃるのではないでしょうか。
私もいつか結婚して、子どもを持つ日がくるかも知れません。しかし実家が長野県にあるので、なかなか帰ることができないのが大きな悩みです。子育てというのはワクワクすることも多いと思いますが、「親がいない場所でやっていけるのだろうか」という気持ちのほうが強いかもしれません。
そんな中、私が出会ったのが、弘前市内に住む子育てママが立ち上げた「しののベース」でした。
▲お料理教室の様子。みんな和気あいあいと楽しんでいます ※「しののベース」さん提供
弘前市内でフェスや料理教室などを開催しており、子育て世代をはじめ、シニア世代、大学生や社会人などが気軽に集まれる「しののベース」。弘前市の公募型補助金制度「弘前市市民参加型まちづくり1%システム」でも採択されています。
◆11月に開催された「しののフェス」に行ってきました!
11月13日、泉野コミュニティセンターで「しののフェス」が開催されていたのでお邪魔させていただきました!
開始からたくさんの人が集まっていて、子どもたちのにぎやかな声が響いています。
手作りワークショップや歌唱ショー、モデルウォーキング体験など、とても盛り上がっています。子育てママ・パパ向けには、美容体験やアロマ体験、おさがり交換会などのブースが並んでいました。(私もしっかり体験させていただきました)
◆子どもを安心して預けられる環境がある
しののベースの大きな特徴は、キッズスペースで子どもの面倒を見てくれるスタッフがいること。小さな子どもを持つママやパパも気軽に参加することができます。
今回は、さまざまな取り組みを行っている「しののベース」がどのようにスタートしたのか、そして今後の目標や展望を、代表者である角田しのさんにお聞きしてきました。
●今回インタビューをした方●
角田しのさん
小学生の娘2人、就学前の息子2人を育てる母親。
青森県むつ市出身。北海道拓殖短期大学で農業を学び、埼玉で塾講師や家庭教師として働く。実家の父が体調を崩したことをきっかけにむつ市に戻り、現在のご主人と出会い結婚。その後弘前に移住。転勤で青森市に3年暮らしたのち、弘前に戻る。現在弘前暮らし8年目。主婦として子育てに奮闘する毎日。
◆「楽に楽しく!」その思いから、しののベースは始まった
――今日はお客さんでにぎわいましたね!イベントを終えて、手ごたえはありますか?
多くの人が来てくれて良かったです!でも課題は多いですね。もっといろんな世代に来てほしいし、楽しんでほしいので、もっと認知されるように頑張らないといけないと思いました。
◆立ち上げのきっかけは友人の一言だった
――「しののベース」がスタートしたきっかけを教えてください。
5年くらい前から、幼稚園ママ友を招いて家で遊んだりお料理を作ったりしていて、ママたちの広がりができました。その中で、「こういうつながりっていいなあ」と思っていたのがきっかけでしたね。
主婦って、ちょうどいい時間の働き口がないんです。なんにも資格を持っていないと、働く場所は限られてくる。でも、それじゃ楽しくない。ママ友たちとも「もっと楽しいことできるのに~!」っていつも言っていました。
――主婦たちも楽しいことをして働きたい、その気持ちがきっかけとなって「しののベース」がスタートしたと。
そうです。今は「しののベース」のメンバーなんですけど、その友人に「何かやったら?」と言われたことがあって。その言葉を聞いて、「じゃあ、何かやっちゃう?」って(笑)初めてイベントとして形になったのが、2020年11月に開催した「しののフェス」でしたね。
メンバーは幼稚園で知り合ったママたちが多いですが、60代のお料理教室の先生とヨガの先生、50代の統計学の先生も仲間に加わっていて、年齢層はとても幅広いんです。
◆みんな話したいし、つながりを持ちたいと思っている
――しのさんも子育てイベントで苦労したと聞きました。
そうですね。子育て関連のイベントって、実はすごい疲れるんですよ。トイレに行くだけでも一苦労というか。ああ今日も疲れた、恥かいた、って思いながら帰宅することが多くて。コロナ禍になってからは人数制限とかあるので予約すら取れない時もあったりして、なかなか楽しむ機会がなかったんです。
そういう時に、私たちだったらこういうことはしたくないな、楽なイベントにするのにな、と思っていたので、「しののベース」では「どんどん騒いでいいですよ!」というスタンスで子育て世代の方をお出迎えしています。
――自分たちの実体験が、現在の「しののベース」を作り上げていったんですね。
私自身も疲れていたし、同じ思いを抱えていました。疲れるのが分かっていると、出るのも面倒になるんですよ。それならもう家でいいや、みたいな。でも本当はみんな外に出たいし、いろんな人と関わりたいし喋りたいと思っているんです。だから「楽な場所があればいいな」と思いながら作りました。
▲しのさんのご自宅で開催されたヨガ教室の様子 ※しののベースさん提供
◆子育て世代には限定せず、多世代にこだわる
――「しののベース」は子育てサークルですが、子育て中の人じゃなくても交流していいのは何か理由があるんでしょうか。
上の世代や自分より若い人と関わることってなかなかないじゃないですか。そんな中で、年配の人と話すだけで勉強になるし、経験豊富なのでなんでも相談できる。家族や親戚以外の年上の人とつながるって難しいけど、ここなら誰でも来ていいから多世代と交流できる。そういう思いで、世代は限定していません。
本当は、孤立しがちな年配の方とか、話し相手がほしい人とかもどんどん来てほしいし、私たちもそれを望んでいます。子どもと遊んでもらうだけで本当に助かるので。
――子育てサークルって、他にもあると思うんですが、その中で「しののベース」にしかないこだわりはありますか?
楽で楽しいこと。多世代が交流できるし、こうやってスタッフが子どもの面倒を見てくれるところはなかなかないと思います。私たちも楽しみをどんどん増やしていきたいし、美容教室や料理教室を開きながら、つながりを作っていきたいと思っています。
――コロナ禍での立ち上げは、大変なこともありましたか?
大変とはあまり感じなかったですね。むしろ、コロナ禍のほうが孤立するじゃないですか。子育て世代も、シニア世代も。でもそれでいいわけがない。みんなつながりを求めていることには変わりないので、しののベースは今だからこそ必要な取り組みだと思っています。
――これからの課題や展望はありますか?
イベント自体を認知させるのが今後の課題です。しののベースはリピーターさんがかなり多いので、まずは一回来てほしいです。でも、まだまだみんなの腰は重いのかなあとは感じていますね。
あとは、いろんな場所でイベントを開催したいと思っています。今はイベントを開催できる場所が限られているけど、これからメンバーも増えて、同じ思いを持った人が集まれば、場所はもっと増えると思う。町内会の集会所みたいにいろんな場所にあれば、シニア世代も歩いて来られるし、家に帰っても親も誰もいない子どもも集えるので、少しずつですが頑張っていけたらなと思っています。
――これから移住を考えている人に伝えたいことはありますか?
移住者こそ、輪に入りにくいんですよね。知り合いがいなかったらなおさら。そういう人にこそこういうコミュニティが必要だと思うので、どんどん来てください。ここに来て、自分のつながりをどんどん広めてほしいです。
弘前は、公園も多いし、人が優しい。外食する場所にも困らない。ちょうどいい田舎感があるので、いい場所ですよ!
◆取材を終えて
子育てで悩んできたからこそ生まれた「しののベース」。
現在は子育て世代向けのイベントだけでなく、合コンや子どもの遊び場提供など、活動の場を広げています。
普通に生活していたら出会わなかった人たちがつながることで、自分の生活が楽しくなったり、人生が動いたり、いろんな変化が生まれたりしますよね。
つながる場所が減り、一人で子育てする人や孤立に悩む高齢者は増加しています。市民が交流できる場所は、これからも必要になっていくと感じました。
子育てする人も、シニア世代も、大学生も、社会人も、ぜひ一度、しののベースの催し物に参加してみてはいかがでしょうか。