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まちなかタイルアートから10年、参加した親子と歩く土手町

◆歩道に埋め込まれた無数の足形

弘前駅中央口から市役所や公園に向かう途中、こぎん柄のタイルがはめ込まれた遊歩道が続きます。弘前の中心で長い歴史を刻む土手町商店街です。
10分ほど散策してみるとタイルの特徴から3つのエリアがあることが分かります。また中ほどには、一定間隔で、かわいらしい足形タイルが埋め込まれています。その数はなんと130!
「土手町 足形タイル」でネット検索したところ、中土手町街路整備事業として2010年に募集されたチラシ画像を見つけました。一体、どのような経緯でこのような企画が生まれたのでしょうか。

◆思いが詰まったタイルアート誕生の秘密

手掛かりを求めて市役所をあたると、当時商工労政課で事業を担当した澁谷卓さんより貴重な情報を得ることができました。
澁谷さんは、中土手町商店街の街づくり委員会に頻回に足を運び熱い思いを肌で感じ、その活動に共感していったとのこと。
道路改修の主体である県・市との橋渡しに尽力された結果、実物大の足形を使った歩道アート企画の成功につながったそうです。

次に澁谷さんのご紹介で、街づくりのリーダーであった平山幸一さんに、お話を伺うことができました。
平山さんによると、このタイルアートのアイデアは日ごろから、「街の良い文化を残しつつ活性化をすすめるには?」「どんな人にも楽しく親切な街づくりとは?」と考えていた結果、生まれたそうです。どんな最先端のものでも、完成した時から古いものになってしまう、作って終わりなのではなく、街の一部として継承されるものであることが重要であったといいます。


▲タイルアートの企画を進めた平山さん

立場の違うお二人がともに口にされたのは、「楽しむ」ということです。
「せっかくだから楽しみな繋がりにしたかった」「生活者からインバウンドまで楽しい取り組みを続けたい」という活動を振り返った言葉から、楽しんで歩ける街・新しいつながりの生まれる街の頼もしい支え手であると思いました。


▲次々に生まれた企画の一つ「音声付きMAP」にも足形タイルの説明が♪
(平山萬年堂に設置されています)


▲マップの中に、タイルアート💛の紹介がありました。

◆足形の子どもたちは今

▲タイルアートに参加した阿部さん

平山さんの紹介で、土手町で3代続く生花店の店主である阿部昌士さんを訪ねました。
阿部さんには3人のお子さんがおり、全員の足形があります。今回は末っ子の娘さんにも加わってもらい、歩道を歩きながらお話をしました。
娘さんは、自分の名前と年齢の刻まれた足形を見つけるなり「わー、小さい!」と楽しそうな様子。
土手町商店街で生まれ育った娘さんは、「登下校時、皆に見守られていて安心だった」、また「商店街には子どもの話をちゃんと聞いてくれる大人が多い」と言います。阿部さんも「まだ生後1カ月で、本当に小さかった」と懐かしそうです。


▲10年前は赤ちゃんだったんだよ

◆子どもと街の未来を繋ぐタイルアート

街づくりのメンバーであり、お父さんでもある阿部さんが、足形への思いや子どもさんの活躍などを説明してくださる様子から、同じように、130人の子どもたち全員に、かけがえのない10年の歩みがあり、また続いていくのだ!と確信できました。
当初、ただかわいいと思っていた足形タイルが、街づくりの一環として10年前に生まれた足形タイルアートであることを知り、企画を練った方、支えた方、賛同した家族から、お話を聞くことができました。

大型スーパーやネットの買い物は便利だと思いますが、時にはご家族で、足形タイルをたどりながら、土手町を散策してみてはいかがでしょうか。家族のこれまでの歩みや、これからの暮らしについて語り合う機会になるのではないかな、と思います。