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昔話で味わう津軽弁 ~津軽弁初心者も楽しめるラジオ番組発見!~

▲アップルウェーブ全景 土手町にあります

弘前に引っ越してきて最初に感じたのは津軽弁の奥深さと難しさです。早く津軽弁を覚えたいと思っていた時に出会ったのが、ラジオから流れるネイティブな津軽弁で情感豊かに語られる「津軽の昔っこ」でした。津軽弁初心者の私にも楽しみながら津軽弁に親しめる番組で、聞くのが楽しみになりました。

◆「津軽の昔っこ」とは?

「津軽の昔っこ」は津軽の昔から語り継がれてきたお話(昔話=むかしっこ)を津軽弁で語る昔語りのラジオ番組です。
弘前市のコミュニティFM放送局「アップルウェーブ」で2002年4月から毎週日曜日の午前7時30分~午前8時の放送と、金曜日午後4時~午後4時30分に再放送する長寿番組。

月に1回スタジオに5~8人が集合し、各自が持ちこんだ原稿を1話ずつ読み上げて収録します。放送は翌月あたりからで、各回の放送内容は、過去に収録した話も交えて季節感のあるものを選んでいます。同じ物語が収録される場合もありますが、語り手が違えば味わいも変化するので、問題ないとのこと。

取材した2021年12月6日は7人の語り手さんが収録に参加。和気あいあいとした雰囲気の中、順番にスタジオに入り収録をしていました。


▲収録のためにスタジオへ。奥に一人で入ります

◆語り手さんはどんな人?

アップルウェーブで放送中の「津軽の昔っこ」を語る皆さんを紹介します。
「NHK講座 むかしっこ」(2021年3月閉講)の受講者中心に構成されたサークル「和の昔こ(わのむかしっこ)」のメンバーが語り手として参加。公民館や老人ホームへのボランティアにひっぱりだこでしたが、コロナ禍のため対面での活動が減少し、現在は10人ほどのメンバーでラジオ放送を主軸に活動しています。

サークル代表は、講師もしていた佐藤ツリさん。最年長として皆をけん引する佐藤さんは茶目っ気たっぷり。メンバー皆に慕われています。
「ツリさんの話を聞いて引き込まれました。ぜひ、やってみたくなり、アップルウェーブに直談判をしたんです」「津軽弁の語りが懐かしく、自分も語ってみたくなった。ボランティアで訪問する高齢者の施設では本当に喜ばれるので、話し手になってよかったと思います」と今回が初めての収録となった品川さんと土岐さんがそれぞれお話を聞かせてくれました。

▲事前のチェック。収録はリハーサルをせず1度で終了

◆番組に込める思い

「津軽を遠く離れたリスナーから『懐かしい』と感想をもらうこともあります。津軽の言葉を誇りに思ってほしいですし、この放送で癒やしを届けられたらと思います。津軽弁を知らない人たちにもたくさん聞いてほしいです」。
そう話すのはアップルウェーブ放送部の佐藤誠さん。

「東京などで開催される物産展で、『むかしっこ』をBGMとして使いたいと問い合わせもありますよ」
「『むかしっこ』は世代を越えて伝わっていく文化であり、話を通して道徳や倫理を教える良い機会だと思います。内容も津軽の生活をそのまま表していて、生の津軽弁を残すことでも収録は意義のあることだと感じています」とも話していました。

◆「むかしっこ」へのこだわり

「『むかしっこ』は口承の伝統文化で、根底にあるのは素朴であること」とメンバーの中心的存在の田村美代子さん。
幼子に枕もとで聞かせる独り語りが「むかしっこ」のスタイルであり、朗読劇のように複数では語らない素朴さが「むかしっこ」ならではの良さと言います。
ただ、今の時代は「むかしっこ」に馴染みのない聞き手も多く、楽しく聞けて、より津軽弁を親しんでもらうための工夫をしています。
「舞台で演じるように大げさに声を出すこと。親しみをもてるような語りをすることを心がけています。いうなれば声優かしらね」とキラキラと目を輝かせて聞き取りやすい声でお話してくださる田村さん。

ラジオを聞いたときに表現豊かな話し方に引き込まれてしまうのもうなずけます。
佐藤ツリさんは、「時代によって津軽弁の語り口調も違います。これからの津軽弁はもっと変化していくと思います。演者を輝かせることが私の仕事」と微笑みました。

▲津軽の昔っこの原稿。書きこみやチェックがいっぱい

◆津軽の昔っこの台本や素材はどこから?

ラジオ放送開始から今年19年目となった「津軽の昔っこ」。たくさんのお話はどこから来るのだろう?そんな問いに答えてくださったのは創始者の渋谷伯龍さん。
「津軽や青森県に伝わる昔話を基に、津軽弁に書き直しています。そういう台本が私の手元にたくさんあります。語り手さんのところにあるのは、もともとNHK講座の教材からの物が多いですね。現在は200を超える数が、ツリさんのところにあります。ほかの逸話から着想を得て創作することもありますね」
「語り手さんがそれぞれ得意な話もあるので面白いですよ」
「津軽弁は大和言葉が伝わってくる過程で徐々に変化してたどり着いた形態ですね。言葉は旅をするんです。変化の過程はたどることができるんですよ。たくさんの人に津軽弁を伝えたいですね」
いろいろな津軽弁の事例を交えて教えてくださり、とても勉強になりました。

▲販売しているCD。アップルウェーブ含め8か所で販売しています。インターネットで通信販売もしています

◆津軽弁の魅力を伝えたい

アップルウェーブで放送している「津軽の昔っこ」は、パソコンやスマホで簡単に聞くことができます。CDも販売されています。
一度聞けば、津軽弁の豊かな味わいにほっこり癒やされる。
津軽弁を初めて聞く人も、津軽を離れて過ごしている人にもお勧めの番組です。

聞いたらきっと津軽に来たくなるかも。

弘前にきてね~!まってるはんでの~!


▲取材に応じてくださった皆様。津軽弁の達人です!