弘前ぐらし 弘前移住情報サイト

青森県弘前市の移住応援サイト「弘前ぐらし」は移住やUIJターンの情報を発信しています。仕事探しのための求人や転職情報、補助金等の支援、暮らしのための医療、福祉、住宅や空き家情報、移住イベント情報、就農や起業までサポート。有楽町の東京事務所でも相談受付中。

弘前のりんご農家の1年

▲雪ののったりんご

「真っ赤なりんごにうっすらと雪がのっているのは、とてもきれいなんですよ」

そう話す大湯長(つかさ)さん(56才)は、弘前市石川地区の5代目の農家です。若い頃トラックの運転手として神奈川で勤めていた時に出会った、神奈川出身の女性と結婚。農家を継ぐために2人で弘前に戻ってきました。先代までは、りんご栽培だけでは収入が少なく、冬場は出稼ぎに行く状態でした。2人はそのような農家経営の見直しを進め、りんご栽培だけで生活できるように少しずつやり方を変えていったそうです。

やがて、1年中りんごを販売できる現在の体制になりました。県外出身の奥様と結婚することによって外からの視点や新しい風が運ばれてきたのです。2人が結婚して23年。上の女の子2人は、すでに成人。下の男の子は小学校4年生です。「子どもたちが小さい頃、りんごの木の枝にブランコを下げて遊んでいたのが懐かしい」と、長さんは話します。

▲せん定作業

りんご農家の1年は、作業の連続です。
1月。りんごの枝のせん定作業が始まります。お天気を見ながらのせん定作業は2カ月ちょっと続きます。その後、せん定をした枝の片付け、病気の木の治療や苗木を植えるなど、園地の整理を続けていきます。りんごの木はネズミにかじられてしまうこともありますが、大切に管理すれば長いものでは、50年くらいもつそうです。

▲りんごの花

4月下旬に桜の花が咲くと10日くらい遅れてりんごの花が咲き始め、受粉のためにマメコバチが活躍します。りんご畑には、数種類のりんごを混植しています。種類によって時期が少しずつずれて花が咲き、その花の間をマメコバチが飛び受粉が進みます。

▲りんごの小さな実

一方、全ての花に実がついても大きくはならないので、花すぐりを始めます。開花している期間は限られているので、花が終わった後はそのまま実すぐりに移行します。この実すぐりの作業は、6月いっぱいまで続きます。4.5haの園地には30種類約1000本のりんごの木がありますので、作業は果てしなくあります。大湯さんが経営する大湯ファームでは、スタッフやアルバイト約10人で作業を行います。実すぐりなどは機械化のできない作業です。

▲実すぐり作業

いつも忙しいりんご農家ですが、7月は1年のうちでも少し楽をできる時期とのこと。8月になると、早生の品種の収穫が始まります。その後も次々といろんな品種の収穫が続きます。並行して採り残した実すぐりや、赤く色付かせるための葉取り作業、木になっているりんごの向きを変えるつる回し作業もあります。

▲りんごの収穫作業

9月から11月頃に収穫はピークになります。天気予報の台風の進路にドキドキしつつ、りんごの熟度も見極めながら収穫作業は続きます。食べてみて味を確認するのはもちろん、表面にツヤが出てきてアメ色っぽくなってきたり、りんごのお尻の部分が青から黄緑に変わったりするなどが見極めのポイントだそうです。1本の木でも熟し方に差が出るため、3回に分けて収穫することもあります。

▲収穫されたりんご

最後に収穫する品種の「ふじ」は、蜜が入り始める11月上旬に作業が始まり、全ての収穫作業が終わるのは11月20日頃です。木から1つずつ手で採ってカゴに入れて集め、園地である程度選果をして、トラックで大きな冷蔵倉庫に運び保管します。収穫するりんごは、20kg入りのコンテナで約3000箱にもなるそうです。年の暮れにかけて、選果や発送作業がピークとなります。


▲選果作業

忙しい毎日が続きますが、収穫は1年の集大成の時期です。春からやってきた作業や、病気にならないように見守ってきたことが思い出されて、「楽しくてうれしい気持ちになる」と長さんは話します。りんごの成長過程を見ていることが何よりの喜びなのです。それだけに忙しい時期が過ぎて久しぶりに園地に行くと、りんごの実がすっかりなくなっていて、反面寂しい気持ちにもなるそうです。

▲カヤの中にあるマメコバチのまゆ

1月。一面真っ白なりんご畑が広がる弘前で、作業はすでにスタートしています。りんごの花の受粉作業を助けてくれるマメコバチのまゆとり作業です。りんごが実をつけるための受粉作業にマメコバチを使っていることは、なんとなく知っていましたが、そのマメコバチの管理も、大湯ファームでは自分のところでやっているのです。

▲まゆとり作業の説明をする長さん

マメコバチは、りんごの受粉作業が終わった後、自分の卵をカヤの茎の中に生んで一生を終えるのですが、次の年に卵からかえる全てのマメコバチに活躍してもらうためには、人の手をかけておく必要があるのです。カヤの茎を割っていくつも入っているマメコバチのまゆを、取り出して温度管理をしておきます。暖かくなってかえったマメコバチが飛び立っていく時に、カヤの出口でまゆのまま死んでいて出ていかないと、その奥にいるマメコバチは飛び立てないのです。りんごが実をつけるために働いてくれるマメコバチ。まゆとりの作業をしている様子を見ながら長さんのお話を聞いていると、まゆの1つ1つがとても愛おしく感じました。


▲大切に育てられたりんご

りんご畑がどこまでも広がる弘前ですが、生産者の高齢化や後継者がいないことで、栽培を続けられなくなる農家もあります。大湯ファームではそのような園地を譲り受けて少しずつ園地を広げてきました。美味しいりんごを作るためには、りんごの木の1本1本に目をかける必要があるので、人を育てながら、品質も守りながら、目の届く広さを考えて育てています。

美しい景色を守り、地域全体が活性化して、りんごに関わるみんなの暮らしが良くなっていくように、そう願って大湯さんご夫妻は今年も大好きなりんご栽培を続けています。

▲大湯さんご夫妻


※りんご畑の写真は、大湯ファームから提供していただきました。

大湯ファームH P https://www.ooyufarm.com