わたしの土手町シリーズ⑪ もっと行っておけば良かった土手町
ある雪の日、電車が運休したため、代行バスで弘前に向かった。
授業まで時間があったので、弘前パークホテルの1階にあった紀伊國屋書店へ行った。目的は、以前から気になっていた花柄の手帳である。
当時の私は大学生。アルバイトの収入は少なく、1つの物を買うことすら今より勇気を要していた。バスに揺られた疲れもあり、「せっかくだから」という思いも背中を押し、手帳を購入した。しばらく後に紀伊國屋書店は閉店。手帳は1年間、お気に入りとして使い続けた。
現在の私は、予定を手帳ではなく職場のパソコンで管理している。手帳や本を買う人が減ると、書店の経営は厳しくなるのだろう。
飲食店もそうだ。大学時代に行こうと思っていた「土手町パーラー モード・カフェ」は、とっくに閉店してしまった。
それなりの収入を得られる頃には行きたい店がなくなっている。皮肉なものである。地元の店がそこにあることは当たり前ではないのだと、実感した出来事であった。
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