わたしの土手町シリーズ① 3代でお世話になった「紳士服のシミズ」
「紳士服のシミズ」は、祖父、父、私と3代に渡って、ちょっとよそ行きの洋服をあつらえる、そんなお店だった。
私の実家は在郷のりんご農家だったが、祖父が出かける時に着ている服はシミズで買っていたし、お使いで、祖父が裾上げしたスラックスを、高校の帰りに受け取って帰ったこともあったなと思い出す。
お駄賃は、岩倉具視の五百円札だ。
私が就職する時に、初めて上下のスーツを父に買ってもらったのもシミズだし、流行りのトレンチコートを買ってもらったのもそうだ。紺のブレザーと合わせたグレーのスラックスと、オックスフォード生地のボタンダウンを自分で買いに行ったこともある。
当時の店員さんは、私より10歳ほども年上だっただろうか。それほどずっと上ではなかった気がするが、私の生半可なファッションの知識をばかにせず、誠実に洋服選びに付き合ってもらったと記憶している。
本記事に関する著作権やその他の権利は弘前市に属します。
弘前市の許可なく、本文や写真を無断で転載することを禁止いたします。