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小規模特認校の常盤野小・中学校とは?1日取材してわかったこと

▲校舎内からみる岩木山山頂。市街地から見る見慣れた岩木山よりもぐっと近くにあります

小規模特認校制度を平成30年度から導入した常盤野小・中学校。小規模特認校制度とは、学区外からの入学が可能となるだけでなく、学校生活においても一般的な学校とは違うさまざまな特色・魅力があります。学年に関係なく交流する子どもたちの和気あいあいとした雰囲気、小中併置校・小規模校・自然環境に恵まれた学校ならではの魅力をお伝えします。ぜひご覧ください。

 

◆常盤野小・中学校って?

みなさま、こんにちは。岩木山と林業を愛する市民ライター畑井です。

趣味のロードバイクで岩木山方面へ行くたび「こんなところに学校が!」と同時に「通っていたらどんな風に過ごすだろう」といつも気になっていた学校がありました。それが弘前市立常盤野小・中学校です。場所は旧岩木町の常盤野地区にあり、弘前市中心地から西へおよそ20キロ離れた大自然の中にあります。近くには嶽温泉や岩木青少年スポーツセンターがあります。

弘前市のホームページには「小規模特認校」という制度の紹介と共に「参加体験型教育」や「一人一研究」といった気になる言葉がならんでいました。
小規模特認校を調べると、従来の通学区域は残したまま、特定の学校については通学区域に関係なく当該市町村内のどこからでも就学を認める制度とあります。

なんだかすごい学校が弘前にあったんだと驚く私。気になることがいっぱいのそんな常盤野小・中学校を、ほぼ1日中取材できることになりました。

 

◆登校はどうやってしているの?

取材は12月上旬、当日の天気は晴れ。弘前市中心地にある自宅の周りは雪が溶けはじめていましたが、常盤野小・中学校周辺の道路は凍っていました。標高の違いを感じます。国土地理院の地図によると学校の標高は432.4メートル。弘前市役所が44.8メートルでその差は387.6メートルもあります。こんな遠地にある学校へ学区外から登校する子どもたちはどうやってここまで通っているのでしょうか?

学校と弘前市役所岩木庁舎を結ぶスクールタクシーが運行されていて、みんな決められた時間に乗って登校しているのです。

▲登校してくる子どもたち

他の学校と比べるとコンパクトな玄関。みんな、並んで入ってきます。小規模特認校ということで取材の人が来ることがそれほど珍しくないとのこと。知らない大人がいても子どもたちに驚く様子はみられませんでした。

 

◆校舎の中の様子は?

校舎内の案内をしてもらいました。
25年前に建てられた新校舎。市内では唯一の小学校と中学校が一体となった校舎です。玄関を通ってすぐに広い階段があったり、1階から3階までの吹き抜けがあったりと私が普段イメージする学校とは違い、すごく新鮮な印象を受けました。

▲校舎へ入ってすぐ目の前に広がる広い階段。壁には自己紹介文が書かれた写真が貼られています

▲玄関を抜けると、ほぼ全ての教室を見渡すことができる吹き抜けが広がります。明るい光が入り込んできていました

特に驚いたのが、給食の時間に子どもたちと先生が集まるランチルームがあることです。広々とした空間に大きな窓があり、とても開放的です。新型コロナウイルスが流行してからは利用を制限していましたが、現在はみんなそろって給食を食べているそうです。

▲ランチルームの様子。大きな窓からは岩木山や子どもたちが育てているトウモロコシ畑が見えます

 

◆常盤野小・中学校の特色と魅力とは?

特色や魅力について校長の工藤利彦先生に説明していただきました。

学校では月に1回の頻度で何かしらの自然体験が行われます。山岳ガイドと一緒に岩木山の隣にある黒森山に登山へ出かけたり、山菜のシーズンには山菜を取りに行ったりもします。校舎わきにはトウモロコシ畑を作って、植え付けから収穫までの一通りの作業を行っています。学校の近くの嶽地区には、青森県のブランドトウモロコシの「嶽きみ」の畑が広がっていて、甘いトウモロコシの栽培には好適地です。新しい取り組みとして、育てたトウモロコシを近くの嶽温泉で販売する計画を進める予定です。
冬期間は体育でスキーの授業が行われており、1月はアルペンスキーを百沢スキー場にて行い、2月はクロスカントリースキーを岩木青少年スポーツセンターで行っています。いずれも最終日には大会や記録会が開催され盛り上がります。

▲学校と周辺の様子。学校の周りが自然という教科書になっています

総合学習の時間には「一人一研究」という授業を行い、子どもたちが自由にテーマを決め、調べたことをパワーポイントを使ってまとめます。体育館で行われる発表会の日は、子どもたちと先生だけでなく、保護者も集まり発表が行われます。好きなゲームについての発表をした子どもに対し、お母さんから「あなたはどうしてそんなにゲームが好きなんですか?」と、楽しく活発な質疑応答も行われていました。

小規模で小学校・中学校が一体となっていることによる魅力もあります。現在の全児童生徒数は25人(小学生17人、中学生8人)で、複式学級が取り入れられています。1つのクラスの児童生徒数が少ないため、一人一人の時間を確保しやすくなります。中学3年生では、進路先に応じた対応を行いやすくなるメリットもあります。
児童生徒総会には小学生・中学生が一緒に参加しており、小学生はリーダーとして行動する中学生たちの姿をロールモデルとしていつも見ながら、一緒に過ごすことになります。
小規模でのデメリットとして考えられる多様な人との交流の少なさを補うため、なるべく学校以外の人との交流の機会を多く作れるようにも配慮しています。

元々持っていた常盤野小・中学校の特色と魅力は、小規模特認校制度を導入するに至った理由でもあります。制度の導入前は児童生徒数が8人まで減少し、このままでは地域の学校がなくなる恐れがありました。
基礎的な教育に加え、自然を生かした体験活動を取り入れて、地域の伝統や産業についての学習や体力の増進を図れること、小・中学校が一体となっていることで学年を超えた絆を育むことができるといった教育的資源を市内の子どもたちにも広く提供したい。
学校の持つ魅力と特色を最大限に生かすため、小規模特認校制度が導入されることとなりました。

 

◆子どもたちの様子は?

先生から伺った魅力と特色は、普段の様子からも見て取ることができました。
この日、小学生の1・2年生のクラスでは絵日記、3・4年生のクラスでは版画の制作が行われていました。どちらも先生とのやり取りが多く行われており、手厚くフォローを受けているのが印象的です。

▲楽しそうに絵日記を書く児童たち

▲版画の様子。集中して制作に取り組んでいました

この日のメインイベントであった餅つき会では、中学生が小学生に声がけをしてサポートをしている様子を見ることができました。
教頭先生から「特に先生から指導したわけでなく、常盤野小・中学校に受け継がれた伝統のようなものであって、普段と変わらない日常」だと教えてもらいました。
小学生低学年の内から、当たり前のようにこの環境で過ごしていることが伝わってきました。

▲餅を持って迷った様子の小学生を中学生の先輩が誘導します。上級生のリーダーシップが垣間見れた瞬間でした

平日にも関わらず、保護者の参加人数の多さにも驚きました。あいさつもそこそこにあうんの呼吸でテキパキと準備が進みます。
餅つき会終了後、昼休みの時間に中学生は卓球、小学生はバスケットボールで遊んでいました。学年に関係なく交流があるのが当たり前の風景で、中学生と小学生とで同じ遊びをすることも珍しくないそうです。

▲昼休みの様子。人数が少ないぶん、何をするにも学年に関係なく交流が行われます

昼休みの合間に中学生から「将来の夢は桜守(さくらもり)になること。『一人一研究』では、弘前公園の『弘前七桜(ひろさきしちざくら)』について調べた」と教えてもらいました。また、学校の良いところは「みんなが一生懸命にやっているところ。あと自然がたくさんあるところ」と話していました。
悩むことなく話しているその様子から、普段からみんなが主体性を持って何かに取り組んでいることや、自然に囲まれた環境の良さを子どもたちが感じ取っていることが伝わってきました。

 

◆取材を振り返って

常盤野小・中学校の魅力と特色。人数の多い学校や市内の中心地に近い学校ではなかなか得られにくい体験ができそうです。わずかな時間でしたが、授業の様子や昼休みの様子をみて確かに伝わってきました。

初めは、保護者が希望して入学を決めることが多いのかな?と考えていたのですが、子どもが学校見学をして気に入ったり、兄弟姉妹が先に入学していて話を聞いて入学を希望したりと、子どもが進んで希望することも多いようです。大人よりも敏感に感じ取るものがあるのかもしれません。

興味を持った人はぜひ、弘前市のホームページ内にある「小規模特認校」の項目をご覧になってみてください。


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