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「自然は未来からのかりもの」~「弘前だんぶり池」について~

皆さま、こんにちは。

弘前市民ライター4期生の渡部です。

私は高校卒業後弘前を離れて、30年以上も県外で暮してきました。

2023年5月にUターンで戻ってきましたが、変わらぬ風景、特に岩木山に優しく見守ってもらっているようで、帰ってきてよかったなぁと思っています。

その一方で…。

りんご畑が住宅地に変わり、山には新しい道路ができ、近くのため池がなくなるなど、開発が進んでいることに気が付きます。

弘前から自然が消えているのではないか?そう感じていたころ、あるイベントで「弘前だんぶり池(以下だんぶり池)」の存在を知りました。

 

◆だんぶり池ってこんな場所

JR弘前駅から南西方向に車で25分ほど、土淵川の上流部付近の県道から横道に入ると、住宅地から水田・リンゴ畑へと景色が変わり、森林の中に迷い込んだかのような場所にだんぶり池はあります。

「だんぶり」とは津軽弁でトンボのことです。

その名の通り、これまでに約44種類という多くのトンボが確認されており、その中には、2020年青森県レッドデータブックで絶滅危惧種に指定された貴重なトンボも含まれています。

(すでに観察できなくなったトンボもあり、毎年、44種全てのトンボが見られるわけではありません)

他にも、カエル、メダカ、ゲンジボタルやヘイケボタル、トウホクサンショウウオなどの生物が生息しており、近くを流れる赤沢・大畑沢という2つの清流には、サワガニやカジカが生息しています。

私が訪れた日は、近くにニホンザルが現れ、まるで私達を観察しているかのようでした。

私の家からも遠くない弘前市郊外に、これほどの森に囲まれた自然豊かな場所があるとは大変驚きました。▲2022年8月の大雨被害以前のだんぶり池全景(撮影:佐久間貴也氏)

▲だんぶり池に現れたニホンザル♂(2023.10.12撮影:溝江曙美氏)

 

◆どうしてだんぶり池ができたのか

2001年、弘前市は環境施策の指針となる「環境基本計画」を策定しました。

トンボ先生の愛称で親しまれた故村田孝嗣先生は、この計画の検討委員の一人でした。

村田先生は、当時休耕田だったこの場所に、絶滅危惧種の「ハラビロトンボ」や「ハッチョウトンボ」が生息していることを確認しており、これらの保護と自然環境を残す重要性を強く訴え、「自然環境の復元」(だんぶり池づくり)が計画の重点施策の一つとなりました。

計画策定後、検討委員を務めた方々が中心となり、市民団体「ひろさき環境パートナーシップ21(以下HEP21)」を立ち上げ、市と環境パートナーシップ協定を締結しました。

2002年、HEP21と弘前市が協働してだんぶり池づくりを開始し、環境を壊さないように重機の使用は控え、なるべく人力で作業を行いました。

現在、アプローチ広場にある2つの立派なコテージも、HEP21の皆さんが人力で建てたそうです。

「―自然は未来からのかりもの―という思いを大切にし、綺麗な水や土を大切にする市民を増やすために、

『弘前だんぶり池』の自然に是非触れてほしい」

これは、村田氏が亡くなる前にHEP21に送った最後のメッセージだそうです。

自然豊かな場所は、安全でおいしい食生活・綺麗な大気・人々ののどかな心を育みます。

弘前の自然環境をより良いものにするために、だんぶり池を残したいという想いが伝わってきました。

▲故村田先生(2014.9.28撮影:鶴見實氏)

 

◆だんぶり池はどう使われているの?

では、だんぶり池はどのように活用されているのでしょうか。

一番近い小学校では、毎年「だんぶり池観察会」を実施しているほか、市内公民館の子ども自然観察クラブ、県立高校の部活動、県内にある学校の先生や、企業・家族を対象とした観察会も行われています。

弘前大学環境サークル「わどわ」では、だんぶり池の整備・観察だけでなく、ホタルと共生するまちを目指し「弘前まちなかホタル調査」をHEP21と協働で立ち上げました。

詳しくは、弘前まちなかホタル調査 (hirosakihotaru.com)を検索してください。

また、学校図書株式会社発行の「小学校理科6年」と「中学校科学3」の教科書にだんぶり池が掲載されていて、自然学習の一端を担っています。

近い将来、ここを訪れ自然を学習した子どもの中から、大谷翔平さんや藤井聡太さんのような研究者が誕生するかもしれませんね。

だんぶり池の活用は、当初から、環境教育・環境学習を念頭においてあったとのことですが、村田先生の想いが広がっているように感じました。

▲だんぶり池ウォークラリー(2017.7.9撮影:白戸久夫氏)

 

◆弘前の未来にむけて

このように自然たっぷりのだんぶり池ですが、弘前市民にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?

その答えは、「自然は未来からのかりもの」という言葉にあるように思います。

30年後・50年後の世界は環境破壊が進み、多くの生物が絶滅し自然が少なくなることが予想されています。

そのような世の中になったとしても、だんぶり池を中心に多くの動植物が昔のまま残り、白神山地や岩木山の自然に囲まれ、市民があずましく生活できている未来の弘前。

市民の生活をよくするために、開発や化学薬品・農薬使用をやめるのは無理だと思いますが、それをやらない場所を区分けすることで、環境を残し守ることが今を生きる私たちにできることなのかもしれません。

弘前は今でも十分に住みやすい場所ですが、自然と共存しながら弘前の街づくりができれば、より素晴らしいことだと思います。

私は、自然や生物に対して強い興味があるわけではありませんが、ここの自然に囲まれているだけで心が落ち着きます。

皆さまにも、是非、ここを訪れて欲しいのです。

だんぶり池は、自然の良さを身近に感じることができる場所であるとともに、未来の弘前市民に返却しないといけないものであると感じました。

▲村田氏が製作した看板(2021.4.10撮影:白戸久夫氏)

 

◆最後に

だんぶり池は、2022年8月に発生した大雨で被災し、弘前市による工事とHEP21会員ボランティアによる手作業で復旧中のため、一般開放はされておりません。

詳細は弘前市役所市民生活部環境課に確認してください。

(TEL.0172-36-0677・問合せ先

※2023年10月、YouTubeにだんぶり池の専用チャンネルを開設しました。復旧の様子などもご覧いただけると思います。

▲大雨よるだんぶり池被災状況(2022.9撮影:加藤亮氏)


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