【1000文字ひろさき小説1】待ち合わせのキミ
待ち合わせの時間より早く着いてしまったのは、今日の占いが2人にとってチャンスの日だったから。土手町通りの午後の喫茶店。キミに早く会いたくて窓際の席に座る。行き交う人の流れを眺めながら、今日は天気がいいから弘前公園へ行こうかな。それとも映画館?2人の予定をこれから決めるってちょっぴりワクワクする。
スマホをいじりながらキミのことを考えている。いつ来るかな。待ち合わせの時間はとっくに過ぎてしまっているけど、キミからの連絡はまだ来ない。もう一組のお客さんが店内に入ってきた。店員の視線がちらちらと気になり始めたから、コーヒーを2つ注文した。キミはいつも砂糖なし、ブラック。わたしには苦すぎる味だけど。コーヒーのほかにキミは何が好きなのだろう?どんなドラマを見るの? いつもわたしから聞いてばかりだけど、キミのことがもっと知りたいんだよ。きっとわたしの気持ちに気づいているよね。だからもっとわたしのことも知ってほしい。
コーヒーに口をつけ、苦い味に少しはなれてきたのかも。店のBGMが切り替わり、わたしの知らない昔のヒット曲が流れ始める。「水のおかわり、いかがですか?」。店員が聞きにきたけど、まだ水は残っている。キミからの連絡はそんな時に届いた。「今日は行けなくなった」とメールだけ。体調が悪いの?それとも急用ができたの? 本当は知りたいけど、聞いてしまうとキミはきっと離れてしまう。一緒に食べるつもりだったチョコレートパフェを注文することにした。窓のむこうの土手町通りはチョコレートパフェを食べながら見ていると、少し違った景色に見えてくる。
▲撮影協力=ブルーエイト
食べ終わったパフェの写真を撮ってキミにメールするけど、どんな返事をするのかな。テーブルのコーヒーはすっかり冷めてしまっていて、我慢して一気に飲み干した。パフェを食べた後だと苦みもちょっと消えるみたい。
街はすっかり夕暮れ。土手町の時計台も夕日に染まっている。占いのことを思い出しながら店を出る。今日は2人にとってチャンスの日。ウィンドーショッピングをしながらわたしは帰ります。テーブルにはまだコーヒーが残っているから、キミが飲んでね。
弘前は東北最古の喫茶店を始め、歴史ある喫茶店からモダンでおしゃれなカフェまでさまざまなコーヒーが飲める喫茶文化が根付いた街です。カフェ巡りをするために観光に訪れる人もいるくらいさまざまなお店で楽しむことができます。
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