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津軽の鬼伝説ツアーに参加してみた

皆さんは、「鬼」と聞いて何を思い浮かべますか?

弘前市には鬼伝説由来の地名「鬼沢」と、鬼を祭る「鬼神社」があります。

津軽には鳥居に「鬼コ」がいる神社があり、鬼伝説の中核に鬼神社が存在するというのです。鬼伝説?鳥居に鬼?鬼神信仰?

鬼伝説ゆかりの地を訪ねるツアーが地元で開催されていると聞き、「津軽の鬼伝説バスツアー」に参加しました。

 

◆いざツアーへ!

弘前市鬼沢は弘前駅から車で30分ほどの郊外にあります。ツアーは現地集合か弘前駅からの送迎か選択できたため、送迎を利用しました。到着後、ツアー内容の説明を受けます。ツアー参加者は3歳~80代の21人。皆さんの表情が期待でワクワクしているのが分かります。3台の車に分乗しツアーに出発!

 

①大森勝山遺跡

2021年7月に世界文化遺産に登録された、北海道・北東北の縄文遺跡群のひとつ。

岩木山麓のストーンサークルで、冬至には山頂に太陽が沈む場所につくられ、直径約50メートルの楕円形をしています。遺跡からは祭りに使われた円盤状石製品が出土しています。(引用:縄文遺跡群保存活用協議会パンフレット)

ツアー客を2つのグループに分け、それぞれ専任のボランティアガイドさんがつきます。説明も分かりやすく、スムーズな見学ができました。

▲環状列石のある広場から岩木山を望む。表面に出ている列石はレプリカ。本物は保存のために地中にあります

▲大型竪穴建物跡。立ち入って見学できます。どんな建物があったのか想像が膨らみます

 

大森勝山遺跡見学後は鬼沢研修会館へ移動して昼食。津軽の郷土料理「けの汁」付きです!「きみ(津軽弁でトウモロコシの意味)」の入ったおむすびと箸休めのワラビはスタッフさん手作りのおもてなし。

▲昼食のお弁当。お腹がいっぱいになりました

 

◆鳥居の鬼コ・鬼伝説ゆかりの地を訪ねる
②弘前市種市の熊野宮

創建年月日不明。

スタッフさんの説明に聞き入りながらワイワイと鳥居の「鬼コ」を眺めます。

神社と鬼の取り合わせが不思議です。鳥居の「鬼コ」とは、津軽地方の神社にある鳥居の真ん中にある「鬼」のことで、鎮守の神仏または集落の人たちを災いから守っている良い鬼と言われています。津軽を中心に、40体近い「鬼コ」が確認されています。

▲熊野宮の鳥居。鳥居の真ん中にある「鬼コ」は2代目で、完成後に鳥居のサイズと合わず腰掛ける場所を設置したのだとか

 

③弘前市中崎の月夜見神社

創建年月日不詳。明治以前は大師堂と称される。

ピカピカの「鬼コ」が鳥居に。「鬼コ」はこまめに塗り替えておりパンツの柄も毎回変えるそう。後ろ姿もキュート。

▲月夜見神社の鳥居の「鬼コ」。両肩で鳥居を支えています

 

 

④弘前市富栄の鶴田神明宮

創建年月日不詳。1459年4月に鶴田四戸沢の産土神として再建した記録あり。

こちらの鳥居の「鬼コ」は、明治・大正時代に海外に柔道を広めた前田光世(通称:コンデ・コマ)の父に仕えた人が木彫り上手であり、奉納したとのことです。

神社の隣に前田光世生誕の碑がありました。敷地は私有地なので道路から拝見。

▲弘前市富栄の鶴田神明宮の鳥居の「鬼コ」。がっしりしています

 

⑤弘前市鬼沢の鬼神社

村人に恵みをもたらした鬼を祭るために1686(貞享3)年建立。津軽における鬼神信仰の中心的な場所である。

▲鬼神社の鳥居と扁額(へんがく)

 

鬼神社の鬼神様は心優しい鬼なので扁額の「鬼」の字にはツノがありません。拝殿の扁額の隣には鬼伝説にある、鬼が水路を築くときに使用したという大きな農具を模した額が飾られています。

▲鬼神社の拝殿

 

宮司が常駐しない鬼神社は、氏子さんで管理しています。境内は清潔に整えられ、とても静か。社殿の参拝後、社務所で氏子さんからお話を聞くことができました。

節分には鬼神社に全国の鬼が集まると言われ、鬼沢では今も節分に豆まきをせず「福は内、鬼も内」と掛け声をかけます。門松を立てたり端午の節句に菖蒲を飾ったりする風習もありません。

鬼神社の神事は全て旧暦で行います。宵宮、大祭、例祭などがあり、なかでも旧暦1月1日の鬼神社しめ縄奉納裸参り(通称:鬼沢のハダカ参り)は厄払いや五穀豊穣を祈願し大鳥居の前で大樽の冷水に入って身を清める、有名な神事となっています。また、旧暦の1月29日に開催の七日堂祭は2022年4月13日に青森県無形民俗文化財(※)に指定されています。※津軽の七日堂祭(つがるのなのかどうさい):弘前市役所ホームページより

▲鬼神社社務所で。氏子さんの説明に熱心に聞き入ります

 

氏子さんから説明を聞くことができるのもツアーならでは。宝物の扁額木製置絵「鶏戯の図帖(とりゆうぎのずちょう)」に、参加者はうなずいたり見入ったり。

 

鬼神社では、隣地にある義民「藤田民次郎」のお墓も見学。藤田民次郎は1813(文化10)年に不作と重税に苦しむ百姓たちのために津軽藩に訴願し米の配分や免税を実現したが、その全責任を一人でとり22歳の生涯を閉じました。義民として、現在も大切に伝えられ、供養されています。(引用:鬼沢まるごとMAPより)※昼食時に藤田民次郎を題材にした劇の上映がありました。

 

▲津軽の鬼伝説ツアースタッフの皆さん

 

◆ツアーを終えて

和気あいあいとした雰囲気に包まれ、盛りだくさんの内容で、一日があっという間に終わってしまいました。

スタッフさんの説明も丁寧で分かりやすく、鬼沢を大切にする皆様の想いの伝わるツアーでした。毎回工夫してコースを考えており、今回は地元の縄文遺跡を取り入れたとのこと。リピーターがいらっしゃることにも納得の楽しい時間を過ごすことができました。

ツアーの主催は、鬼沢地区の文化・伝承を保存し伝えるために、平成24年に結成された「歴史と伝説の里『鬼沢の会』」。ツアー企画、演劇とコラボするなど、さまざまな活動を行っており、現在は鬼伝説を題材にした紙芝居を制作中。2023年春に完成予定とのことです。

 

鬼にまつわる伝説とともに生きる里。津軽の不思議を探しに、あなたも訪れてみてはいかがでしょうか。

 

※鬼伝説・津軽の鬼コ巡りについて記載のある古津軽のご案内はこちら:古津軽(こつがる) (kotsugaru.com)