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弘前から広がるパートナーシップ宣誓制度~虹色のくらしを作る取り組みを追って~

◆男女共同社会から持続可能な多様性社会へ

日本では、1999年に施行された「男女共同参画社会基本法」をスタートに、性別に関わらずすべての人が活躍できる社会づくりが20年以上にわたり取り組まれてきました1)。弘前市は、この考えを地域で実践し、持続可能な社会を構築していくために「弘前市男女共同参画プラン」2)を策定しています。そして2020年12月、東北地方で初めて「弘前市パートナーシップ宣誓制度」の運用を開始しました。現在の法律では、戸籍上の性別が男女以外のパートナーは婚姻による入籍が出来ません。婚姻することができない、双方または一方が性的マイノリティである2人が婚姻に相当する関係であることを宣誓し、それを自治体が証明する「パートナーシップ宣誓制度」は、この壁をなくす目的で生まれました。首都圏では渋谷区・世田谷区などの自治体で2015年から導入され、弘前市では4組のカップル(2022年3月末現在)が利用しています。

男女という性差による制約は、婚姻だけでなく学びや働きの場での困難や差別につながります。性差に関わらず多様な生き方を選べる社会の実現には、私たちが、それぞれ(の人権やライフスタイル)を互いに知り・認め合う機会が必要です。でも一体、私たちの暮らしと男女共同参画・パートナーシップはどのように結びつくのでしょうか。

1)内閣府男女共同参画局  2)弘前市男女共同参画プラン

◆弘前市の担当者の思いを聞いてみました

2021年12月「弘前市パートナーシップ宣誓制度」の運用開始1年を契機に、広く制度を周知し、性の多様性について理解を深めるための講演会が開催されました。私は、この講演会を担当した弘前市企画部企画課ひとづくり推進室の堤緑さんにお話を伺うことができました。堤さんは2019年からこの推進室の開設メンバーとして、性的マイノリティの共同参画に向けた事業の推進に取り組んでおられます。

様々な価値観を持ち暮らしている一人一人に気づくことから共同参画が始まると、堤さんは言います。多様な性を自認している人口の割合は3~10%と言われますが、毎回の書類を書くたびに男か女かの選択を迫られては、個性は埋もれてしまいます。世の中には男と女しかいないような印象を強調され不快な思いを重ねることにもなりかねません。そこで堤さんが最初に取り組んだのは、市で使用する書類の性別欄の見直しです。

▲弘前市市民意識アンケートの「1.性別」欄に③その他を追加した

その後も市職員を対象にした研修会や市民向けのセミナーなど、性的マイノリティへの理解を深める取り組みを進めています。制度運用開始1周年を記念したこのシンポジウムでは、特定非営利活動法人東京レインボープライド共同代表理事の杉山文野さんを迎え、多様な家族のかたちを支える仕組みについて、大学教員や産婦人科医・看護師・医療ソーシャルワーカーなどの専門職や、会社員・高校生など市民が一同に集い考えを深めました。

▲2021.12.22開催 弘前市パートナーシップ宣誓制度創設1周年記念講演会の様子(提供:弘前市企画課)

弘前市の取り組みは、現在、青森県のパートナーシップ宣誓制度へとつながっています。堤さんは、2021年6月弘前大学男女共同参画推進室からの依頼で、「広がる同性パートナー制度」というテーマで、教育者・学生を対象に弘前市の取り組みについて話題提供や意見交換を行ったそうです。私は、堤さんとお話しながら、気づいたときに気づいた人が今やらなければ、よいまちは作れない、という責任感や危機意識の強さを感じました。

◆対比・対立(違い)を対話(つながり)に替えていくために

パートナーシップ宣誓制度が目指すまちづくりは、誰もが参画できる持続可能なプロジェクトデザインです。本年3月には災害時の性的マイノリティの方への配慮についてのセミナー「ひとにやさしい社会推進セミナー LGBT×防災」が開かれました。私も参加して、性的マイノリティの方々の具体的な困りごとやニーズについて理解を深めることが出来ました。

私が最も印象に残ったのは、講師(弘前大学山下梓先生)が紹介された、被災者からの「有事にはセクシュアルマイノリティの存在は消えてしまう・・・(配慮されない)」という声です。「私たちは弱者ではない」という言葉も胸に刺さりました。暮らしに便利でスマートな完成品はありません。さまざまな状況で生じる課題や困り事を自分のこととして向き合い、一緒に悩みながら作っていくものだと思いました。

見回してみると、残念ながらまだたくさんの「女だから、男だから」という枠組があることに気づかされます。ひとにやさしい社会推進セミナーへの参加を契機に、防災だけでなく、健康や保健に関すること、受診時や入院時の不都合など、具体的な場面ごとに考えていきたいと思いました。

◆たくさんの色が重なり合う虹色の街に

日々の暮らしと、男女共同参画・パートナーシップはどのように結びつくのか。はじめは分からなかった私ですが、制度について調べたり、担当者の話を聞いたり、また実際の企画に参加することで理解を深めることが出来ました。性的マイノリティか否かではなく、私たち一人一人が多様な困りごとを抱えているという点で皆同じではないかと思います。

多様性は、たくさんの色が重なり合う虹にたとえられます。弘前市は、パートナーシップ宣誓制度の展開という虹色の橋が架かった多様性社会の先進地域になれると思います。それはまちの価値になり、県内外の人に選ばれる弘前ぐらしとして育っていくのではないでしょうか。

▲弘前市で配布しているリーフレット