りんごの花の10日間~美しく咲くだけじゃない!確実に受粉をしてりんごの実に
青森県の花となっている「りんごの花」
りんごの花は桜が開花してから約2週間後に咲き始めます。
津軽地方に住んでいると、「桜の花が終わったなぁ」と思うころ、りんごの花が咲き始めるので、「桜の次はりんごの花!」とワクワクした気持ちになります。
桜は花びらが散ってから、葉が出てきますが、りんごは葉が出てから花が咲きます。
弘前に来て初めて知りました。
◆りんごの花の咲き始め
りんごの品種によって咲く時期や色や形が違います。
私の園地では「王林」※の花から咲き始めます。
※「王林」は10月下旬から11月上旬に収穫される黄緑色のりんごです。 青りんごの代表とも言われています。 「王林」はもぎたての甘い香りが特徴です。 甘味がたっぷりなりんごです。
りんごの花は中心から咲き始めます。
まわりのつぼみがぷっくり膨らんでいる状態が、とてもかわいいので大好きです。
つぼみは濃いピンクで、花びらは白です。
「ふじ」※の花はうすいピンク色のつぼみです。愛らしくて、かれんな花だと思いませんか。
りんごの花が満開になると、花の香りでうっとりした穏やかな気持ちになります。
「メイポール」という受粉のための花もあります。
濃いピンク色の花をびっしり咲かせます。
※「ふじ」は10月下旬から11月中旬に収穫される赤いりんごです。 日本や世界的にも最も多く生産されているりんごが「ふじ」です。 甘みが強く、酸味もあり、とっても食べやすいりんごです。 蜜入りのふじは最高級の味わいで人気です。
「メイポール」は果肉が真っ赤なりんごがなりますが、小さく酸味が強いので、ほとんど流通はしていません。
受粉専用の花として栽培しています。
熟練したりんご農家さんはりんごの花だけを見て、りんごの品種が分かるそうです。
◆りんごの花の命は10日間
りんごの花は10日ほどで散ってしまいます。
この10日間は、りんご農家にとって、とても大切な時間です。
品種にもよりますが、りんごの花は他の品種の花粉を受粉しないと、りんごの実にはならないとのこと。
たとえば「ふじの花」には「王林の花粉」など、別の品種の花粉がつくことでりんごの実になるそうです。
受粉はりんごの花が咲いている間に行う必要があります。
花が咲いている10日間に受粉が終わらないとりんごの実にならないのです!!
◆りんごの受粉方法その1 マメコバチによる受粉
りんごの受粉方法は2つあります。
1つ目はマメコバチによる受粉です。
マメコバチとは針をもたないハチです。
晴れて天気のいい日にマメコバチは花から花へ飛んで花粉を集めます。
別の木の花粉も一緒に運んでくれるので、その時にりんごの受粉もしてくれます。
園地にはマメコバチの巣を準備して飼育、管理しています。
マメコバチは子孫繁栄のために、準備した巣に卵を産み付けて花粉を運びます。
◆りんごの受粉方法その2 人の手でひとつひとつ行う人工受粉
2つ目の方法は人工受粉です。
今年はりんごの開花時の気温が低い予報でした。
気温が低いとマメコバチが飛ばない可能性があります。
マメコバチが飛ばないと、りんごの受粉が行われません。
りんごの木にりんごの実がならないと、農家にとって大変な問題です!
なので、確実に受粉できる人工受粉も行いました。
昔はどこの農家も人工授粉をしていたそうです。
マメコバチが普及して、人工受粉は少なくなってきたそうです。
花粉をつけた綿を中心の花にポンポンつけていきます。
人工授粉は花の咲いている天気のいい日しかできない、とっても大切な作業です。
りんごの花が咲けば、自然にりんごが実るものだと思っていましたが、そんな簡単ではないのですね。
りんごを実らすためにたくさんの苦労があることを知りました。
◆大きくおいしいりんごにするための摘花(てきか)作業
受粉が無事に終わると、次の作業に移ります。
りんごの花は1箇所に5個くらい花が咲きます。
中心花を残して、他を摘み取る摘花作業を行います。
私は「せっかくきれいに咲いている花なのに摘み取ってしまうなんて、りんごの花がかわいそうだなぁ」と思っていました。
しかし、できるだけ花のうちに取ってあげることで、りんごの木の養分が抑えられ、1つの花に十分な栄養が集まるそうです。
1つになった花は、大きくおいしいりんごになるとのことです。
単純に「きれいだなぁ」と眺めていたりんごの花ですが、りんごの花はりんごの実になるために、とても大切だということを知りました。
りんごを収穫するまで道のりはまだまだ長いですが、花の時期が終わり、実が膨らんでくると少しホッとします。
▲受粉がうまく行われたようで、実が少しふっくらしてきたりんご
今年も無事においしいりんごが収穫できますように!